「八百万(やおよろず)」とは、算用数字の意味する「800万」という数字ではなく、
「数えきれないくらいたくさん」という意味を持ちます。
「八百万」とすることで、日本にはたくさんの神様がいらっしゃいます、ということを表しています。
このことは、日本全国どんな地域にも神社があり、そこにいろいろな神様がお祀り(おまつり)されていることからも分かります。
あなたの近くの神社には、どんな神様がお祀りされているのでしょうか。
ここでは、日本全国の神社でお祀りされていることの多い、代表的な神様たちを紹介します。
illustrated by Norin ※イラストの無断転載等は固く禁じます
※ 同じ神社でも多くのお名前を持つ神様がほとんどのため、代表的なお名前で表記しています。
伊弉諾命(イザナキノミコト)
伊弉冉命(イザナミノミコト)
「日本の国土を生んだ、偉大な夫婦の神様」
「イザナミノミコト」とともに日本の国土や多くの神々を生んだとされる偉大な神様です。死者の国である「黄泉」(よみ)の国へ訪問したことでついたケガレを洗い落としたとき、アマテラスオオミカミ、ツクヨミノミコト、スサノオノミコトという尊い神様がお生まれになりました。また、「1日に人が1000人亡くなるならば、私は1500人生まれるようにしよう。」とおっしゃって、たくさんの人が生まれる世の中にしたとも描かれています。
天照大神(アマテラスオオミカミ)
「太陽にも例えられる、日本の神々の中心である神様」
すべてのものに光をもたらす太陽にも例えられる最も尊い神様で、日本の神々の中心的ご存在です。イザナキノミコトが黄泉(よみ)の国から戻られて、禊(みそぎ)をされた時に御生まれになりました。天皇陛下の御先祖様であり、伊勢の神宮をはじめ全国各地でおまつりされています。
「神宮大麻(じんぐうたいま)」はこの伊勢神宮の御神札で、日本中のご家庭の守り神でもあります。
月讀命(ツクヨミノミコト)
「夜の世界をおさめる尊い神様」
夜の世界をおさめる月の神様です。イザナキの右の目から生まれ、アマテラスオオミカミ、スサノオノミコトと共に尊い神様とされますが、日本神話での記述はそこまで多くありません。「月を読む」と記すことから、月の満ち欠けで判断されてきた暦を司る神様だと説明されることもあります。
素盞嗚命(スサノオノミコト)
「ヤマタノオロチを退治した、勇敢で知的な神様」
イザナキノミコトの鼻からうまれた神様。最初は姉であるアマテラスオオミカミを困らせた荒々しい神様として描かれますが、その後出雲の国で人々を苦しませていた大蛇のヤマタノオロチを退治したことから、勇敢で知的な神様として描かれます。
大国主命(オオクニヌシノミコト)
「いなばのしろうさぎを助けた優しい縁結びの神様」
神話「いなばのしろうさぎ」でうさぎを助けた神であり「大黒さま」「大己貴命(オオナムチノミコト)」の別称でも親しまれている神様です。スクナヒコナノミコトと協力され地上に立派な国をつくりあげられました。立派な国を建てられた後は、子どもであるコトシロヌシノミコトやタケミナカタノミコトの助言を仰がれて天上を治めておられたアマテラスオオミカミに国を譲られました。その感謝の証として建立された御殿が現在の出雲大社の始まりとされています。縁結びの神・医療の神として多くの人々に親しまれている神様です。
少彦名命(スクナヒコナノミコト)
「医薬や酒造り、温泉の神様として知られる小人の神様」
小人の神様として描かれるこの神様は、オオクニヌシノミコトと兄弟のように協力して立派な国をつくりあげた神様です。国をつくりあげたあとは、1人海のかなたへと去っていきました。医薬や酒造りの神様、また温泉の神様などいろんな性質をお持ちの神様として、日本中で信仰されています。
事代主命(コトシロヌシノミコト)
「えびす様と同一視される商売繁盛、漁業の神様」
オオクニヌシノミコトの子どもで、神々の先頭に立って統率する神として描かれます。また、国譲り神話では、特に重要な決断をした神様として有名です。七福神のえびす様と同一視されることもあり、商売繁盛や漁業の神様としても知られています。「コトシロヌシ」以外に多くの名前をお持ちです。
応神天皇(オウジンテンノウ)
「武士から信仰をあつめた武勇の神様」
母親である神功皇后(じんぐうこうごう)とともに全国に40000社余りある八幡神社にておまつりされる神様で、ホンダワケノミコトとしてもおまつりされています。多くの武士からの信仰を集めた、武勇の神様として有名です。
武内宿禰命(タケノウチノスクネノミコト)
「国に功労のある神様として紙幣に何度も登場した神様」
我が国で最初の「大臣」の称を賜り総理大臣の祖ともいえる国の功神です。第12代から第16代までの天皇に仕えて国造りに尽力され360歳で御昇天なされた日本一長生きの神様です。また、第15代応神天皇を幼少から立派にお育てになったことから子育ての神様でもあります。
倉稲魂命(ウカノミタマノミコト)
「きつねがお使いの商売繁盛の神様」
古来より全国的に、お稲荷(いなり)さんとして親しまれている神様です。稲をはじめ穀物、食べ物との関係の深い農業の神様で、江戸時代中頃、田沼意次が自らの屋敷にお社を祭ったところ運が開けたことが庶民・商人に伝わるなどして商売繁盛の神としても広まり、定着しました。「稲荷」の語源は稲が生えるからきており、イネナリ(稲成り)という意味で稲の成長を助ける神様を表しています。(また、きつねが倉の稲をねずみから守ること、垂れ下がった稲穂が尻尾に似ていることなどから、)きつねを神使とする場合が多く見られます。
菅原道真(スガワラノミチザネ)
「天神さまと仰がれる学問の神様」
菅原道真公は、平安時代の優れた学者です。幼少期からその才能を認められ、詩文や学問に優れ、右大臣にまで昇進しました。しかし、えん罪により大宰府(現在の福岡県)に左遷され、延喜3年(901年)、病で亡くなりました。死後、京都をはじめあちこちで災いがおこったため、人々は祟りによるものと考え、道真公を神様としておまつりするようになりました。今日では「天神さま」として親しまれ、道真公の英知が優れていたことから、学問の神様、受験生の護り神として全国で篤く信仰されています。
大山祇命(オオヤマツミノミコト)
「豊かな恵みを与えてくださる山の神様」
自然の恵みを与えて下さり、また人間にとって特別な場所である山を司る神様として知られています。
オオヤマツミノカミには桜のように美しいコノハナサクヤヒメと岩のように永遠の命を象徴するイワナガヒメという娘がおり、天から降った天孫のニニギノミコトに二人を嫁がせようとしましたが、ニニギノミコトはイワナガヒメを拒絶します。オオヤマツミは「もし両方を妻に迎えれば、天孫の命は岩のように永遠だっただろう」と述べましたが、結果として天孫の寿命は桜の花のようにはかないものとなってしまいました。